賃貸物件(マンション・アパート)にフリー・インターネットを導入する
最近は、すっかり、自宅にWiFiがあるのが当たり前の世の中になりましたね。賃貸物件を運営する大家さんとしても、入居者向けのインターネットの提供方法は一つの悩みポイントですよね。テック大家さんが所有する賃貸物件は1Kの一棟ものが多いのですが、物件や地域によってケーブルテレビ経由だったり、光回線だったりと、固定インターネット回線もさまざまな種類があります。
今回の記事では、主にフリーWiFiを導入した「ハイドレンジア箱根」の館内ネットワークを取り上げたいと思います。この物件では、各部屋まで館内ネットワークを引いており、その辺り、他の敷設の方法、メリットデメリット、私が行った設計の意図を整理して紹介します。
賃貸物件のインターネット提供のパターン
マンションやアパートのような賃貸物件で大家さんが入居者にインターネットの提供をする場合、いくつかパターンがあります。ここでは、まず、誰が月々の利用料金を支払うのか、という観点で見てみます。
大家さん負担
月々の支払いは大家さんが行い、入居者はタダで使えるという方式です。実際には管理費、という形で一部は入居者に負担してもらうことになるのですが、インターネット代としてはタダです。
私が箱根に所有する「ハイドレンジア箱根」では、この方式でフリーWiFiと各戸での有線ネットワーク接続を提供しています。
インフレ懸念が現実のものとなりつつある昨今、スマホ代も払って、それに加えて部屋でインターネット代も支払うのは負担が大きいと考える方もいるかも知れません。
入居者第一で満室を目指すような健全経営の大家さんなら、入居者にフリーインターネットの提供を考えるでしょう。他物件との差異化要素としても、大家さん負担は競争力強化の一つの選択肢になるのではと考えています。
賃貸マンションのフリーWiFiの構築に関しては、このブログでも取り上げておりますので、以下の記事も合わせてご覧ください。
ただし、館内で入居者全員で回線を共有することになるので、場合によってはネットワーク帯域が足りずに速度が遅くなることもあります。また、建物内で誰がどんなデバイスでもつなげるので、大家さん側の設定によってはセキュリティ上の問題が起こる可能性があるので注意が必要です。
入居者負担
月々の支払いは、入居者が行う方式です。単身者向けの1K賃貸ではこの方式が多いのではないでしょうか。
大家さんとしては、各部屋まで回線が引けるようにしてあげるだけなので、場合によっては費用はほとんどかからないというのがメリットです。
通信業者としても回線契約が取りたいわけですから、なんとしてでも各部屋に「線」を通そうとしてくれます。建物に穴を開けたり工事をする必要がある場合も出てくるのですが、大家さんが敷設の許可さえ出せば、すんなり導入することができます。
あとは、入居者が好きにインターネット業者と契約すれば固定インターネット回線が引けます。
この方式を採用している賃貸物件は多いのではないでしょうか。
両者負担
月々の支払いは、大家さんも入居者も両者が行う方式です。大家さんは年会費のような形で業者に支払いを行います。その分、入居者は低料金でインターネットを使えるというものです。
ケーブルテレビ業者がケーブルテレビと一緒にインターネット接続も提供するというパターンがあります。その代わり、ケーブルテレビ業者は、オーナー向けと称して、大家さん宅にサービスをタダで提供するというケースもあるようです。
以上をざっとまとめると以下のようになります。こうではない場合もありますので、参考程度に見てください。
費用負担 | 大家さん目線の説明 | 入居者目線の説明 |
---|---|---|
大家さん | 固定費がかかる 設定によってはセキュリティなどのリスクあり | ネットの費用がかからない 設定によっては回線の速度が問題になる |
入居者 | 建物に穴を開ける工事が必要になる場合がある 工事許可を出すだけでネット使用可物件になる | 速度の問題がない 自分で契約する手間がかかる ネットの費用がかかる |
両者 | ケーブルテレビ会社が提供するパターン 固定費がかかる オーナー向けのサービスが受けられる場合がある | ネットの費用が一般的に言って安い 自分で契約する手間がかかる |
大家さん負担のフリー・インターネットの提供パターン
ここからは大家さんが入居者に対してフリーでインターネットを接続するパータンを説明します。下記の内容は、私が「ハイドレンジア箱根」で実際に導入したものです。オーナーである私が、ほぼDIY的に各機器の選定から設置、設定などを行ったのですが、入居者の皆様に快適に利用していただいています。
ここからは少し入居者がネットにつなぐ方法、という観点で話を整理してみたいと思います。
フリーWiFiによる接続
建物内でフリーでつながるWiFiという形で入居者が使用可能にする方法です。ハイドレンジア箱根では、共用で使えるリビングやランドリー室など共用エリアを充実されています。そのため、館内どこでも同じWiFiにつながるようにするという工夫が必要となります。
WiFiローミングという手法で解決しています。詳しくは、以下の記事も御覧ください。
有線によるインターネット接続
WiFiがあまりに一般化しているので、有線でインターネットに接続したいというケースは少ないかも知れません。ですが、有線でのインターネット接続には「安定性」というメリットがあります。WiFiだと使う場所や他のAPとの干渉により、つがりにくくなるケースがあります。その点、有線であれば使用する場所は選びますが、無線通信のような不安定になる要因はありません。
入居者が、有線接続が必要になるパターンはいくつかあります。
ひとつは、入居者が持っているパソコンのネットワーク機器にWiFi機能が搭載されていない場合です。最近の機器は大抵WiFIが使えますので、あまりこのケースは少ないでしょう。
もうひとつが、WiFiがつながりにくい場合です。
私が所有するハイドレンジア箱根では、WiFiのアクセスポイントは内部廊下に設置しています。そのため、部屋の中はつながりにくいというケースも想定していました。その場合にでも、部屋の中に有線のインターネットが来ていれば、部屋の中にWiFiルーターを設置することでWiFi強度を補強することができます。
以上のようなケースを考えた場合、各部屋には、LANケーブルで接続できる回線を用意しておきます。このケーブルは、CAT5やCAT5e とよばれるようなモジューラーケーブルです。
以下の写真はハイドレンジア箱根の1室(1Kの部屋)です。部屋の壁からLANケーブル(CAT5eケーブル)が出ていて、そこにWiFiルーターを設置すると、部屋の中のWiFi無線の強度は最強です。
建物全体の配線を図にすると、以下のようになります。
この図のように、インターネット・サービスプロバイダから来た回線はルーターを通り、「スイッチ」という機器に入ります。HUB(ハブ)と呼ばれることもあります。ただ、HUBとスイッチでは厳密には役割が違うので、ここではスイッチと呼びます。
スイッチを購入後そのまま上記の配線をしても使えるのですが、ここで重要な課題が出てきます。
それは、建物内のすべての部屋につながっている機器が「ネットワーク的に見えてしまう」という課題です。たとえば、201のパソコンにファイルサーバーなどを立てると、303の人のスマホからも見えてしまいます。今時の使い方からするとちょっと特殊なケースかも知れません。でも、あまり気持ちのいいものではないですね。また、ハイドレンジア箱根では同じネットワークで監視カメラなどを動作させています。これも入居者がアクセスできてしまうとすると、あまりよろしくないです。この課題は、スイッチのVLANという機能を使えば解決できます。
ですが、VLANに関しては長くなるので別の記事で詳しく説明しています。こちらも合わせて御覧ください。
補足:TP-Linkの格安WiFiルーター
上記の写真で、部屋の中にWiFiルーターを設置するケースを示しました。ここで使っているWiFiルーターですが、TP-Linkのとても小型のものです。TL-WR902ACという型番号の製品で、公式サイトでは「ワイヤレス トラベルルーター」と記載されています。サイズも、74mm × 67mmという10cmを切る大きさなので、確かに旅行などの持ち運びに便利です。
一般に家庭用のWiFiルーターという製品は、上位のネットワークから来たLANケーブルを「WAN側」というポートに挿します。それとは別に、「LAN側」ポートと称して4つくらいのLAN端子が搭載されいるのが普通です。その分、機器のサイズは大きくなっています。しかし、こちらのTL-WR902ACという製品はLAN端子がない。単に、有線LANをWiFiにする変換機、くらいのイメージで使えます。これを使うと、確かに今時有線でインターネット使うことないからLAN端子なんて不要だよな、と改めて思ってしまいます。
で、これを1Kの部屋の中で使ってもらいます。1Kならちょうどいいのです。Fire TVをつないで、スマホを2台くらいつないで、YouTubeを二つくらい同時に再生しても問題ありません。
よろしければ、是非一度使ってみてください。
TP-Link TL-WR902ACの記事も書きました↓
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