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オートロックシステムComelit製SENSEを導入したらテック大家さん的にステキだった

2023年10月26日エントランスシステム

筆者、テック大家さんは自身の物件「ハイドレンジア箱根」をリノベしました。奥さんが建築士なので、数年かけたこの物件の壮大なリノベーションを取り仕切っているのは奥さんです。リノベの一環としてオートロックセキュリティを導入した、というのが本日の前ふり。

導入に関しては、システムに強い私に相談が持ち込まれたのは当然のおはなし。そして、色々調べた結果たどり着いたのが本日ネタにするComelit 。イタリアのメーカーのもので、SENSEと呼ばれる製品です。

ものは、以下の写真。さすがはイタリア製。見た目が美しいエントランスパネル。入居者の皆さんが大切なお客さんをお招きするのにふさわしい佇まいじゃありませんか。

(と言っても、宅配業者くらいしか来ませんが…)

でもこれ、美しいだけじゃない。中身もスゴイんです

Comelit 製SENSEで何ができるのか?

これで、何がができるのか?

って…

「エントランスのオートロックシステムなんだから呼び出しでしょう?」と思われたんじゃないでしょうか。

はい。まー、そうなのですが、言わせてください。

元々、奥さんオートロックシステムを私に相談したのは、部屋の呼び出しを入居者のスマホに表示させたいから。Comelit製のSENSEは、専用スマホアプリを使って実現できるのです。

入居者宛てのお客さんが建物の入口にあるSENSで部屋番号を押すと、入居者のスマホで呼び出し音が鳴ります。応答するとSENSに搭載されているカメラの映像がスマホアプリに表示され、1階エントランスに来ているお客さんと会話できる、という代物です。呼び出し音は、建物の中にいるときだけでなく、入居者が外出していても届きます。そう。インターネット経由で呼び鈴が鳴るのです。

アプリ画面は、以下のような感じ。

Comelit製SENSEのアプリ画面

そして、この画面から鍵マークを操作すると、あら不思議。1階エントランスのドアのロックが解錠されます。

どうです?便利じゃないですか?!

一方、入居者がエントランスから館内に入るときは、以下の写真のような非接触の鍵(RFIDキー)を使います。これを、1階エントランスでSENSEにかざすとロックが解錠されるというシステムです。非接触というのもイマドキ感満載(!?)。

Comelitの非接触RFIDキー

このシステムを私の物件に導入するのを決めたのは2019年。その時点で、日本製のものや中国製などの海外製のさまざまな商品も調べました。ですが、日本製のものはカッコが悪かったり、インターネット経由の仕組みがテック大家さんとしてはスマートに見えなかったりして却下。海外製のものは、惜しいモデルもあったものの、どうも要件が合わず却下。なかなか、機能的に満足するものがありませんでした。そんな中、見た目も機能も満足できるのがComelitだったのです。

導入方法

導入に関しては、日本の代理店である株式会社ナカヨさんにお願いしました。ネットで個人輸入しようとも思ったのですが、ちょっとハードルが高そうでした。加えて、ナカヨさんは国内のオフィスにデモ機があり、実際に動作を見せていただけたので、代理店経由での導入を決めました。

SENSEはインターネット経由でスマホにつながります。したがって、建物のネットワークとSENSEをつなぐ設定が必要になります。ネットワークにはいくつか要件があり(後述)、単につなげば動くものではありません。導入した「ハイドレンジア箱根」のインターネット回線および館内のLAN設備は、私、テック大家さん自身がDIY的に構築したも。ですので、館内ネットワークとSENSEの接続作業はナカヨさんの担当者と私が行いました。まさにDIYですね。

建物全体のLAN構築に関しては別記事にありますので、こちらも合わせて御覧ください。

SENSEはオートロックシステム。ということは、建物1階入り口のドアの「鍵」つまり電子錠ともつながなければなりません

私の物件ではドアロックはMIWAの電子錠(BAN-DS1)を導入しました。国内の施錠システムではメジャーな製品とうかがいました。これとSENSEを接続して、施錠・解錠を行う必要があります。ちょっとした電気工事です。と言っても、線をつなぐだけなんですけどね。

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導入コスト

このシステムのいいところは、固定費がかからないところです。導入時はそこそこのお金がかかりますが、一度導入してしまうとシステム使用料のような固定費が発生しません。

このシステムは一部、Comelit社のクラウドシステムを利用しています。入居者もアプリを使う際にComelitのアカウントを作る必要があります。しかし、大家さんに対しても、実際に使用する入居者に対しても、月額いくらといった費用は一切かからない。これは非常にありがたいところです。

若干不安が残るのが、お金を払っていない分、突然止まってしまったりしないのかという部分。なのですが、この記事を書く時点ですでに1年近く使っていても、至って安定しています。もっとも、オートロックシステムなので安定していないと困りますよね。技術要素をある程度理解している身としては、インターネットという不確定要素が大きいところでこれだけ安定して動いているのは、正直なところ感心しています。

で、肝心の初期導入コストですが、テック大家さんの心の安全のため、ここに記載するのはやめておきます。あしからず。

Comelit製品はネットワークを駆使した組み込み製品だった

私がハイドレンジア箱根で導入したのは、SENSEのみです。そのため、入居者が部屋で呼び出しを受ける際もスマホがあることを前提にしていて、入居者全員スマホアプリの設定をお願いしています。1Kに住む今どきの若者ならそれで問題にならないでしょう。ある意味、割り切りをした結果です。

ただ、調べてみるとComelit社の製品はエントランスのパネルだけではありません。個別ドアの外の呼び出し用機器や、室内のモニター、セキュリティカメラに至るまで、マンションやオフィスのような建物にトータルで導入できるような製品群をラインナップしています。エントランスのパネルだけでもモデルが何種類かあります。

そして、それらの製品はすべて、建物内部にIP(インターネット・プロトコル)ベースのLAN(ローカルエリアネットワーク)を構築することで動作するよう設計されています。IPネットワーク機器なので、スマホなどインターネットを使った機能との親和性も高いです。したがって、当初からやりたかった「1階エントランスから呼び出したら、外出していても受けられる」というシステムも実現できて当然なのです。

以下が、Comelit製品を導入する際のネットワークの概念図です。

Comelit VIPシリーズの接続イメージ図

左側の緑の枠が、Comelitの製品群(VIPというLANケーブルを使ってつなげる製品のシリーズのようです)が作るネットワークです。Comelit製の「ゲートウェイ」という機器を仲介して、建物のネットワーク(LAN)につなげるイメージです。

上記の図では、左上にモニター製品も図示していますが、先に述べたように私が導入したのはエントランスパネルのSENSEのみです。そちらに話を戻します。

SENSEはネットワーク用語でいうところのサーバーです。インターネット、つまり建物外部からもアクセスできるような機能を持っています。あの美しい筐体の中に、組み込みのサーバーが入っているなどと誰が思うでしょうか。でも、実際そうなのです。

SENSEのネットワーク要件とは?

SENSEを導入するに当たり、建物側のネットワークの要件を整理します。先程、SENSEはサーバーだ、と述べました。インターネット上でサーバーとして機能するためには、建物の外からもアクセスでなければならない。それと同時に建物の中からもアクセスできなければいけない。

グローバルIPとポートフォワーディング

SENSEがインターネット上のサーバーとして機能するためには、建物の外部のネットワークからくるデータがSENSEに到達しなければなりません。建物にはインターネットと接続するためのルーターがあるわけですが、大抵ここにはNATというIPアドレス変換の仕組みがあります。ここで必要になるのが「ポートフォワーディング」の設定です。この作業は「ポート開放」とか「NAT越え」といったりしますね。これが必要になってきます。

この仕組みがうまく動くためには、サービスプロバイダ(ISP)がルーターにグローバルIPアドレスを割り当ててくれないといけません。また、IPアドレスは数字の羅列なので覚えにくい、とか、ISPが割り当てるグローバルIPアドレスが変更になる、といった事情からダイナミックDNS(DDNS)という技術も必要になります。

このあたりの詳細は長くなりますので別記事で解説しております。合わせてお読みください。

ヘアピンNAT

私の物件「ハイドレンジ箱根」は別記事で解説している通りフリー・インターネットを導入しています。各部屋にてインターネット回線が使えるよう建物内にLANケーブルを這わせ、文字通り館内でローカルエリアネットワークを構築しています。そして、このネットワークにSENSEもつないでいます。つまり一つのインターネット回線をSENSEオートロックシステムと入居者とで共有する状態です。

インターネット回線をComelitシステムと入居者で共有する

一方、代理店のナカヨさんと話していると、どうも以下のような構成を期待しているようでした。

Comelitシステムと入居者のインターネット回線は別回線

ようするに、SENSE用のインターネット回線と、入居者のフリー・インターネット用のインターネット回線を別にする、ということです。この方法なら、入居者ががんがんネットで動画を観ようが、本格ゲームをやろうがSENSEには影響なし。カメラ映像や呼び出し音の遅延をなくし、安定して動作させることができるわけです。

理想はわかるのですが、そこはネットの工事でさえ自分でやるほどコスト削減をしている、テック大家さんです。玄関の呼び出しのためだけにネット回線をもう1本契約するのは避けたい。まあ、前者の方式、つまりSENSEと入居者で一つのインターネット回線を共有する方式を選びますね。

ところが、この構成の場合、新たな課題が発生します。館内のLANにつながっている入居者のスマホが「インターネット上のサーバーとして」SENSEにアクセスする際の課題です。館内の機器から建物のグローバルIPアドレスにアクセスできるようにする工夫が必要になります。ルーター製品によって、これができない場合とできる場合が出てきてしまいます。この機能は「ヘアピンNAT」と呼ばれていて、ルーターの仕様しだいでアクセスできないケースが出てくるわけです。

ヘアピンNATに関しても、詳細は長くなるので別記事にしました。こちらも合わせてご覧いただけると嬉しいです。

ネット回線スピード

上の方に掲載したアニメーション動画にあるように、SENSEにはカメラが付いていて、お客さんとはのこのカメラ映像を見ながらスマホでお話できます。技術的には動画のリアルタイム・ストリーミングというのをやらなければいけません。ご存知のように動画は、LINEなどのテキストチャットの情報とは異なり、大きな帯域を必要とします。

ナカヨさんの資料によると、回線帯域は上り下りそれぞれ1Mbps以上となっています。

上で図解したように、うちの物件のネットワークは入居者ユーザーと共通です。入居者がいっぱい使うと、SENSEの帯域が足りなくなる可能性もでてきます。幸いなことに、ハイドレンジア箱根のローカルエリアネットワークでは、VLAN導入のためにレイヤ2スイッチを使っています。VLANに関しては以下の記事が詳しいです。合わせてお読みいただけると嬉しいです。

ここで、QoS(Quality of Service)の設定をしてSENSEのデータがどの通信よりも流れやすくすることはできそうです。

というわけで、QoS設定に関しても、長くなりそうなので別記事を予定しています。お楽しみに!

まとめ

イタリア製ComelitのSENSEを、自分の物件「ハイドレンジア箱根」に導入したお話でした。SENSEを導入すると、1Fエントランスのオートロックでお客さんが呼び出すと入居者のスマホに転送されます。外出していてもスマホに届くので、宅配業者とのやり取りなど、独り身の生活者にはぴったりです。

このシステムを導入するに当たり、国内の代理店である株式会社ナカヨさんにお願いしました。導入費は高いですが、一度設置してしまうと固定費がかからない仕組みなので、大家さんのキャッシュフローにはありがたい限りです。

設定に際しては、建物のネットワーク(主にルーター)に対していくつかの要件がありますので、注意が必要です。でも、Comelit SENSE。安定していますし、よくできていると思います。イタリア人、素晴らしい!


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プロフィール

テック大家さん
ソフトエンジニア兼不動産オーナー。
某超有名日本メーカーにおいてソフトウエア開発畑を30年近く勤務。
かつてはWindowsのアプリ開発や、組み込み機器のソフト開発を行う。プロジェクトマネジメント・オフショア開発・要件管理などの経験あり。現在は、個人開発で、JavaScript/TypeScript/React/Express、PHP/Laravel、Firebase、Google cloud、Arduino(C++)などでプログラミングを楽しむ。
サラリーマンの傍ら不動産経営を始め、現在、1棟モノの賃貸4物件を東京・神奈川に所有。夫婦でおよそ20年の賃貸経営の実績。
最近の物件では、入居者向けフリーWiFiなど、テック系の設備はDIYで自ら構築。
海外MBA取得。