大家さんなら所有物件のサイトを立ち上げろ サイト立ち上げのために知っておきたい「やり方」3分類
所有物件サイト(ホームページ)を立ち上げる理由
筆者テック大家さんは、以前の記事において、大家さんの所有物件の思いを入居希望者に伝えるために、物件紹介のためのサイト(ホームページ)を作成すべきと書きました。
理由はこうです。不動産屋さんに募集の依頼をしたとしても、賃貸情報サイトの多数の物件の中に埋もれてしまう。賃貸情報サイトの検索条件は、賃料・駅チカのように固定的であるため、コンセプトや大家さんの思い入れなどが伝わらない。したがって、特徴的に尖った物件であればあるほど、そういった特殊物件を探している希望者にリーチできない、という課題があるということです。
物件固有の特色を丁寧に説明できる独自のサイトを構築すると、その解決策になるのではないでしょうか。
そこで、本日の記事では、大家さんの賃貸物件説明サイト固有の特徴とともに、サイトを立ち上げる場合に必要となる技術要素を解説していきます。
一口にサイトといっても、さまざまな形式のものがあることは、Googleで日々検索して情報を集めている勤勉な賃貸大家さんならご存知でしょう。Webサイトは「ホームページ」と呼ばれることもあります。HTTPサーバーやHTMLといった技術が登場した当初、「ホームページ」というコトバが意味するのは、あるドメイン(URL)のトップページでした。それがいつの頃からか、何かしらの情報提供するページ自体を「ホームページ」と呼ばれるにいたります。筆者テック大家さんからすると、ホームページという表現は静的に何かを説明するページという印象があり、誤解を招く表現かなと感じます。そこで、ここでは単に「Webサイト」、「サイト」という表現で説明を進めることにします。
所有物件サイト(ホームページ)の特徴
さて、大家さんが自分の物件を紹介するサイトはどのような特徴があるでしょう?
チームを組んでガッツリ運用していくような、大掛かりなものではないのではないでしょうか。筆者テック大家さんがやっているように、素人に毛が生えた程度の知識と手間にてDIYで運用する。そういう大家さんも多いのではと考えています。
コンテンツの内容はどんなものでしょう。ユースサイトのように毎日のように更新されて多くの人に診てもらうサイトでしょうか。たぶん、そうではないですよね。大家さんの思うこだわりポイントや、物件の特徴などを、入居希望のターゲットに対して伝える。つまり、情報を丁寧に説明するような、ある程度静的なコンテンツを提供するサイトになるのではないでしょうか。
コンテンツを訪れる人々は、どういう想定でしょう。サイトにガンガンアクセスが来て、サーバーが落ちてしまわないか心配するほどの反響は想定しないでしょう。むしろ、物件に興味をもって確実にアクション(お問い合わせ)をしてくれるような人がターゲットになりますよね。
また、特殊なキーワードでも、検索したら確実にヒットしてほしい。例えば、猫好き入居者なら「キャット・ウォーク付き賃貸」みたいなキーワードで検索するかもしれません。こういったキーワードに向けてサイトを最適化することを「SEO(Search Engine Optimization)」と言ったりしますが、そういうところはしっかりやっていきたいわけです。
きっと、不動産屋さんも検索するでしょう。その場合は、物件名や地名などで引っかかると、不動産屋にとっても案内しやすい物件になるのではないでしょうか。
まとめると、以下のようになります。
- 比較的静的なコンテンツ(説明文、写真が多い)
- お問合せフォームがある
- アクセス数はそれほど多くない
- 検索キーワードにちゃんとヒットする(SEO対策されている)
こういったポイントを抑えた上でどんな技術を使ってサイトを立ち上げるか、どの技術を使うとコストがどうなるか、というところを考えていくことが重要です。
サイト立ち上げのためのテクノロジーを理解しよう
ここからはサイト構築に対して、どのような技術オプションが考えられるのかをみていきます。サイトは、インターネット上に、いわゆる「サーバー」が必要となります。その「サーバー」をもう少し分解して、その構成要素を考えてみましょう。
「サーバー」はコンピューター・ハードウェアとしての「サーバー」を意味することがある一方で、ソフトウェアを示すこともあり(例えば、HTTPサーバーのように)、注意が必要です。ここではソフトウェア・コンポーネントとしての「構成要素」を分解してみます。
図にすると、以下のようなイメージです。下図は、非常に簡素化して書いています。
一番下にOS(Windows、とか、macOSとか、Linuxとかいうソフトウェア)があります。
その上にデーターベースとHTTPサーバーという箱があります。
サイトを構成する文字情報などのコンテンツは通常、データーベースというソフトウェア・コンポーネントが管理(保存・読み出し)を担当します。データベースを使わずに、コンテンツを複数のHTMLファイルで構成する場合もあります。その場合は、HTMLファイルがサーバーのファイルシステムに格納されるだけ、ということになります。
HTTPサーバーはWebブラウザからのリクエストに答えるためのソフトウェア・コンポーネントです。ApacheやNginxなどが有名です。聞いたことがある方も多いでしょう。
一番上部には、アプリケーションとありますが、ここでいうアプリケーションはスマホの「アプリ」のようなものではありません。Webサイトを構成するためのソフトウェア・コンポーネントを指しています。コンテンツを管理し、ブラウザにHTMLや画像・CSSのデザインなどを反映したデータに変換するようなアプリケーションです。CMS(Content Management System) と言ったりします。この手のソフトウェアには有名な、WordPressがあります。
基本的には、このようなソフトウェア・コンポーネントが動作するハードウェアとしてのサーバーがインターネットにつながって初めて「サイト」の運営ができるわけです。
これらのソフトウェア・コンポーネントを、誰が管理・運営(場合によっては開発)するかにより、利用できるサービスや料金が変わってきます。したがって、まずは上の概念図を理解することが重要です。
サイトのテクノロジー要素のオーナーシップによる3分類
先のソフトウェア・コンポーネントは、一つひとつがサイトを構築するためのテクノロジー要素になっているわけです。そして、それらを誰が管理するのかによって以下のような複数のパターンが考えれます。
筆者テック大家さんなりに3つに分類してみました。
「コンテンツ」は大家さんが作るのでオーナーシップは明確ですね(赤い枠)。
一方、ブルーの点線で囲われた部分も大家さんが作ったり管理したりすることができます。大家さんがどこまで面倒をみるかによって、利用できるサービスが変わってきます。それを3つのタイプに分けました。ちなみに、3分類のタイプ名は筆者テック大家さんが独自に考えたもの。たぶん、他で使われている用語とは異なるでしょう。でも、世間のさまざまなサイト構築サービスは、ざっくりこの分類のどれかに収まると考えています。
賃貸でいうと、スケルトン貸しのように中身は全部賃借人が用意するのか、マンスリーのように家具を含めて大家さんが用意するのか。上記分類は、そうした賃貸契約のタイプ違いのようなものです。
一つずつ見ていきましょう。
VPSタイプ
VPS(Virtual Private Server: 仮想専用サーバー)を利用してサイトを構築するタイプです。仮想的なサーバーを専有してサイトを構築します。仮想的とはいえ、サーバーコンピュータを借りて、大家さんがサイト構築に必要な全てのソフトウェアをインストール・セットアップし、運用する必要があります。ですので、上図では一番左のVPSタイプは、全てのボックスがブルーの点線で囲われているわけです。
知識があれば、凝った機能をもたせることも可能です。ですが、構築や運用を全て大家さんが自分でやらなければいけないのでハードルは高いですよね。まぁ、賃貸紹介サイトくらいなら、そこまでやる必要はないでしょう。
以下の説明では、HTTPサーバーと、PHPなどのスクリプト言語を使ったアプリケーション、といった組み合わせでサイトを構築することを想定しています。ところが、そうではない技術でサイトを作る場合があります。
例えば、Node.jsです。本来Webブラウザで使用する言語であるJavaScriptを、サーバーサイドで実行するのがNode.jsの仕組みです。この場合、HTTPの要求自体をアプリケーションで直接受けるような構成になります。つまり、Node.js自体がHTTPのサーバー機能も搭載していることになります。
次で説明するような「レンタルサーバー」タイプの仕組みだとNode.jsのホスティングができないので、その場合はこのVPSタイプで実現することになるでしょう。
Node.jsなど他の技術に関しては、別の記事にしてみたいと考えています。お楽しみに!
レンタルサーバー・タイプ
いわゆる、レンタルサーバーを利用してサイトを構築するタイプです。レンタルサーバーもサービスのレベルはいろいろあります。大抵はHTTPサーバー(Webサーバー)がレンタルサーバーのサービスの方で用意されており、大家さんが気にする必要がありません。大家さんが気にすべきは、WebブラウザからHTTPサーバーが受け取ったリクエストをさばき、HTMLを構築するプログラム(アプリケーション/CMS)です。上図、真ん中のレンタルサーバー・タイプでは、アプリケーション(CMS)がブルーの点線で囲われています。
CMSというカテゴリのソフトウェアはさまざまなものが存在します。中でも有名なものがWordPressです。WordPressは、CMSの世界シェアで最も成長していて高いシェアを誇ります。そんな理由もあってか、レンタルサーバー側も契約者に対して簡単にWordPressをインストールできる機能をウリにしています。
CMSは、コンテンツを作成、管理、運用が簡単に行えるのが利点です。一方で、WordPressなどのCMSをイントールしてカスタマイズするのは結構な知識が必要になります。カスタマイズの内容によっては、PHP、JavaScriptといったプログラミングの知識が必要になる場合もあるかも知れません。その分自由度が高いといえます。
WordPressでサイトを構築・管理していくために必要な最低限の知識に関してまとめた記事を書きました。こちらも合わせてご覧ください↓
WordPressを使わずに、静的なコンテンツだけでサイトを作る方法もあります。第3の方法ということで記事にしました。こちらも合わせてご覧ください↓
ちなみに、筆者テック大家さんはレンタルサーバー派です。その理由はいくつかありますが、以下の記事に詳しく書いています。こちらも合わせてご覧下さい↓
著者のサイトもご紹介します。
レンタルサーバー・タイプで所有物件「ハイドレンジア箱根」のサイトを構築・運営しています。使っているレンタルサーバー・サービスはエックスサーバーです。ご参考まで、見てみて下さい↓
ブログ・ホスティング・タイプ
ブログ・ホスティング・タイプというネーミングは少し悩みました。
ブログというコトバが流行りだした頃、「ブログを無料で開始できます」みたいなサービスがよく目にしたので、この名前をつけてみました。要は、ユーザーはコンテンツだけ書けばOK、サイトのデザインなどのCMS機能もすべて面倒見ますよ、的なサービスを利用するケースです。ブログだけではなく、一般的なサイト構築も同じような感覚で利用できるサービスが増えています。上図の右端のブログ・ホスティング・タイプはブルーの点線枠は存在せず、コンテンツだけが大家さん管理、という仕組みでサイトを立ち上げることになります。
最近の有名どころとしてはWiXというサービスですね。
デザインテンプレートも豊富で、プログラムを書かなくてもかなり自由にカスタマイズできて、気軽にサイト構築ができます。
ちなみに、一つおもしろい例を紹介します。先程、レンタルサーバー・タイプのところで、WordPressをCMSの例に出しました。WordPressのソフトウェア自体はオープンソースで、誰でもレンタルサーバーにインストールしてサイト構築に利用できます。
一方、WordPressをキーワードにGoogleで検索すると、WordPress.comというサイトが出てきます。実は、WordPress.comはWordPressの開発元が運営するブログ・ホスティング・タイプのサービスなのです。したがって、ユーザはWordPress.comでアカウントを作成すると、「WordPressのソフトウェア」をインストールすることなくWordPressの機能を使うことができます。つまり、CMSも含めてサービス側が面倒見ますよ、という仕組みになっているわけです。ただし、WordPressのカスタマイズに制約があったり、制約を外そうとすると料金が上がったりします。カスタマイズを自由にやりたいなら、レンタルサーバー・タイプで自分でWordPressをインストールしてサイトの構築をするのがよいでしょう。
オープンソースで誰でも使える「WordPressのソフトウェア」を配布しているサイトはwordpress.orgというサイトです。間違えないように注意してください。
One More Thing: サイトのドメイン名
さて、ここまではサイトのソフトウェア技術の側面から説明してきました。最後にもう一つ重要な要素を付け加えておきましょう。その重要な要素とは、サイトのドメイン名です。カスタムドメイン、とか、独自ドメイン、と呼ばれたりすることもあります。https://〇〇.comのようなサイトのURLにつける名前のことです。
ドメイン名に自分の物件の名前をつけると、検索のキーワードとして名前を指定したときにリストの上に出てくる可能性が高くなります。
こういったドメイン名は「お名前.com」のようなドメイン登録代行をしてくれる業者さんにお願いして自分のものにします。賃貸物件を購入するときに不動産屋さんにお願いして物件を所有するようなものです。
ドメイン名は維持するために定期的に費用がかかります。ドメイン名の一番うしろの .com とか .jpなどは、トップレベルドメインと呼ばれます。トップレベルドメインを何にするかにより管理費用が変わってきます。例えば、.comであれば年に1,500円程度。筆者テック大家さんとしては、検索にちゃんと引っかかるようにしたり、入居希望者からの信頼を得るという意味で、ドメイン名はコストをかけるべきポイントだと考えています。
ここで注意が必要なのが、ブログ・ホスティング・タイプでサイトを構築したケース。ブログ・ホスティング・タイプでは、サービスがドメイン名を取得していて、無料でサイトを立ち上げるとサービス側がそのドメイン名の一部にユーザーの名前をつけるような管理をしているケースがあります。
具体的に説明しますと、例えば、WiXの場合。独自ドメイン名を割り当てない状態だと、以下のようにユーザーのアカウント名(accountname)とユーザが作るサイトの名前(site-name)の組み合わせで自分のサイトのURLが決まります。
https://accountname.wixsite.com/site-name
一応、WiXの場合は、独自ドメイン(カスタムドメイン)をつけることができます(有料)。ブログ・ホスティング・タイプのサービも独自ドメインをつけられるサービスが増えてきているようです。サービスを使い始めるときに注意するとよいでしょう。
ドメイン名は、SEOにとって重要になってきます。wixsite.comというドメイン名より、〇〇.comという独自ドメイン名の方が、検索に強くなります。WiX以外のサービスで、サービス側が独自ドメイン名の設定ができないような場合、SEO対策の一つができなくなるので注意しましょう。
独自ドメイン名に関するトピックは、今後別の記事で解説する予定です。お楽しみに!
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