大家さんも所有物件をネットでプロモーションしよう 賃貸情報サイトに登録してもらうだけじゃダメな理由
あなたが、賃貸物件の大家さんとしてこの記事にたどり着いたとしたら、ひとつ質問させて下さい。
自身の所有物件の入居者を、どのように獲得していますか?
物件の最寄りの不動産屋さん、もしくは多くの物件をお持ちの大家さんなら、顔見知りの不動産屋さんかもしれません。ともかく、どこかの不動産屋さんに所有物件の情報を持ち込み、レインズ(REINS)に載せてもらったり、SUUMOやホームズといった賃貸情報サイトに登録してもらっていることでしょう。
思った通りに入居者の獲得ができているでしょうか?
「…」となってしまいませんか。
これまで、本サイト「テック大家さん」では、筆者の所有物件「ハイドレンジア箱根」で導入したネットワーク系の技術トピックを中心に紹介し、テクノロジーで所有物件の魅力を高め、コストを抑えることを目指してきました。
今後は最初の質問にあるような、プロモーションに関する記事を書いていこうと考えています。もちろん、テック大家さんなので、当然テクノロジーをどのようにプロモーションに活かすのかといった内容で進めます。本記事はその第一弾。筆者テック大家さんが、プロモーションをどのように考えているか、少し論じてみます。
ちなみに、筆者テック大家さんはテクノロジーに興味があり、長年の経験によりソフトウェア全般の知識や知見が強みではあります。一方、マーケティングやプロモーションは専門というわけではありません。一応、MBAを所有していますので、そういう意味では「院卒レベル」と言えるかも知れません。
本記事は、賃貸物件の大家さんとして、所有物件のプロモーションに試行錯誤し、色々と考えてやってきたことをベースにして書いております。そのつもりで読んでいただけると幸いです。はい。
賃貸情報サイトが不利になる物件とは
今や賃貸入居希望者は、当たり前のようにネットで物件の検索をする時代です。
Googleなどで検索すると、上位にはSUUMOやホームズといった賃貸情報サイトが上位に並びます。テレビCMやネット広告などをガンガン打っていて、知名度も抜群。自然と入居希望のみなさんも賃貸情報サイトで検索するのが当たり前の行動となるのは仕方がないのではないでしょうか。
そこで、賃貸の大家さんとしては、一生懸命情報サイトで検索される項目が合うように3点セット(バス・トイレ共通)をバス・トイレ別にリフォームしたり、入居者がネット回線を引けるようにしてみたり、と設備投資を頑張るわけです。
しかし、待って下さい。
賃貸情報サイトで検索に引っかかるようにするためのコストや行動は、本当に入居希望者のためになっているのでしょうか。
例えば、賃貸に限らず不動産業界でよくある「駅チカ」というキーワードを考えてみましょう。昨今は後述のように嗜好は多様化しています。また、リモートワークの普及のように働き方やライフスタイルも多様化しています。賃貸物件に、単純に駅からの近さだけではない、別の魅力があればそちらに住みたいという希望者もいるはずなのです。
ところが、リノベーションにコストを掛けて、変わった壁紙にしてみても、あるいは、キッチンスペースをモダンにしてみても、賃貸情報サイト上の検索では、単に「リノベ済み」かそうでないか、「キッチンがある」かないか、といった単純なマルバツに丸められてしまいます。
特徴のある「とんがった」賃貸物件は、とんがればとんがっただけ、賃貸情報サイトでは不利になるというわけです。
嗜好は多様化している
なんでこんなことを言っているのかというと、消費者の嗜好は多様化しているということです。
さまざまなメディアで、デジタル化をきっかけに消費者の嗜好領域が細分化されることで、多様化が起こっていると言われています。消費者が「マス」を前提に発展したテレビから、ネット動画やSNSに流れているのも、多様化のする消費者の嗜好の変化を象徴していると言えるのではないでしょうか。
そのような社会の変化を前提にすると、今どきの入居希望者が賃貸物件に期待することも変わってきている可能性があるわけです。つまり、賃貸情報サイトが検索条件にしているような、画一的な条件が求められているわけではないということです。
逆に、とんがった個性的な物件であれば、それに惹かれる人がいる可能性が高まると言えます。ただし、大家さんがその人物にリーチできれば、ということになるのですが…。
実は、そこが一番難しいところで、後述のマーケティングがキーになってくるポイントとなります。
ネットとSNSの賃貸業への影響
ネットの使われ方も変化しています。SNSや動画配信サイトにアップされるコンテンツは、クオリティが上がっています。それは、そういったメディアのコンテンツは、牽引している世代がSNSネイティブなせいもあるでしょう。または、広告目当てで注目を集めたい制作者が増えることによる競争の影響かも知れません。
理由はさておき、ネット上で制作者がつくるコンテンツのクオリティは上がっていると言えます。
あまたの物件を同等にあつかう不動産屋がとった写真よりも、SNSや動画サイト向けに作り込んだコンテンツのほうが、伝わります。後者のほうが俄然、質が高いわけです。なにしろ、伝えようとする制作者のモチベーションが違います。
正直言って、賃貸情報サイトの物件写真はつまらないです。物件の様子がよくわからない写真が掲載されている場合もあります。街の不動産屋が適当(!失礼)に撮った数枚の写真が中心だからしょうがないのかも知れません。ひどい場合は、大家さんが、アピールしたいポイントを丁寧に撮影したものを渡しても、何のルールか知りませんが、不動産屋さんが撮った、お世辞にもうまいとは言えない写真に置き換えられてしまうこともあります。
一方で、賃貸の入居を希望する若い世代は、SNSや動画配信サイトのコンテンツクオリティに慣れているのです。そんな彼らであれば、不動産賃貸サイトのつまらない写真一覧に不満を感じていることでしょう。
ということは、大家さんにとって、自分の物件をアピールするチャンネルは、本当は賃貸情報サイトではない可能性があります。とんがった個性的な物件であれば、SNSや動画配信などの別のチャンネルの方がマッチしそうであると想像できます。
賃貸も「マーケティング・ミックス」を考える時代
ところで、マーケティングの4Pというコトバを聞いたことがあるでしょうか。
商品をお客さんに選んでもらう確率を上げるために、Product (商品)、Price(価格)、Place(場所/流通)、Promotion(広告/プロモーション)の4つの要素の整合性を取りましょう、という考え方です。
賃貸業でいうと、Productは賃貸物件そのもの、Priceは賃料、というのはわかりやすいですね。たとえば、築年数も古くボロボロなのに相場より高い賃料では、とうぜん入居者は決まりません。「整合性を取る」といったのは、ボロボロで賃料高いみたいなことは避け、物件にたいして賃料を適正にしましょうね、こうしないようにしようね、という意味です。
今のは物件と賃料、という2つのPの話でしたが、マーケティングの4Pの場合は、Product、Priceの他に、PlaceやPromotionもあります。つまり、4つ合わせて全体で整合性を取ろう、という意図になります。
Place(場所)の要素は、賃貸業でいうとさしあたり、どの賃貸情報サイト経由でお客さんに所有物件を届けるのか、といったところ。そして、最後のPromotion(広告)は、不動産屋さんにいくらの広告宣伝費を支払うか、というイメージでしょうか。
でも、この後半の2つのPのこの考え方。筆者には、賃貸情報サイトや、不動産屋という昔ながらの業態に偏りすぎているように見えます。
具体例で考えてみましょう。
猫が大好きで、一緒に住みたいと思っている入居希望者がいるとします。一方、大家さんも猫と一緒に住むことに特化して、キャットウォークを壁に設置したり、部屋の入口に水場を用意したり、部屋の中にトイレスペースをあらかじめ用意したりと、リノベで工夫したとします。この場合、大家さんと入居希望者は「賃貸物件探し」という目的のためにどちらも不動産賃貸情報サイトに行くでしょう。しかし、せっかくこだわっているこの物件は、「ペット可」という単純な情報に丸められ、猫好きが感動すら覚える大家さんの工夫が全く見えなくなってしまうのです。
そうだとすると、大家さんにとって、Place(場所)は賃貸情報サイトではなく、実は、ペット大好きがよく見る愛好家サイトかも知れません。また、Promotion(広告)も不動産屋に払うよりも、そういった専用サイトに広告料を払って載せてもらった方が、猫好きのペット愛好家につながるかも知れません。しかも、そのような入居者なら、相場以上の家賃(Price)でも喜んで住んでくれる可能性もあります。賃貸情報サイトだと「相場」から外れて検索しても見つけてもらえない価格だとしても、です。
このように、4つのPの要素をうまく整合を取って、特定のセグメントのターゲット顧客に照準をピッタリ合わせていくというのが、マーケティング・ミックスの考え方です。
嗜好が多様化して、SNSなどのネット情報やスマホの普及で、生活様式も大きく代わりつつある。この変化に対応するため、大家さんもマーケティングの4Pをしっかり考えるべき時代です。
特徴的な物件こそ「サイト」を持つべき
そこで、テック大家さんは自分の物件「ハイドレンジア箱根」で、マーケティング・ミックスを考え、まずは物件の特徴を伝えきるためにサイトを作ることにしました。
この物件は、建築家の奥さまがこだわってリノベした、世間で言うところの「デザイナー物件」です。ただし、単に見た目がおしゃれなデザイナー物件ではありません。
1Kでバス・トイレ別なのは普通ですが、こだわっているのは共用のリビングや、共用のコイン・ランドリーがあるところ。箱根という土地柄、首都圏に住む人が、ワーケーションや別荘代わりに使ってもらうことを想定。いわゆる二拠点生活者向けのコンセプトを考えました。
しかし、当然のことながら、このような変わった物件を街の不動産屋さんに持っていっても、あまたある他の賃貸物件に埋もれて特徴が出せません。一方、自分の物件のサイトであれば、コンセプトも丁寧に説明できますし、建築家の奥さんがこだわったポイントも、想いを入れて撮影した写真として掲載できるわけです。
そもそも、サイトを持っている賃貸物件というもの(今のところ)珍しいです。それだけで、特別感を演出できます。サイトは物件の名前を冠した独自ドメインを取得して運営していますので、入居希望者に大家さんの思い入れも感じてもらえるのではないでしょうか。
大家さんの想いを丁寧にサイトに載せることで、賃貸情報サイトでは伝えきれない内容も公にすることができます。それによって、コンセプトに同意できるような入居希望者セグメントにリーチできる可能性が高まる、というわけです。
テック大家さん的物件サイト構築
というわけですが、本サイトはテック大家さん。テクノロジーを語るサイトです。
そこで、今後のトピックとしては、テック大家さんの「DIY所有物件サイト運営」に関して書いていきます。
まずは、第一弾としてサイト立ち上げのために必要な知識に関して投稿しました。以下も合わせてご覧ください。
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