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ダイナミックDNSで賃貸物件内部サーバー。Comelitオートロックにドメイン名でアクセス。

2023年11月6日エントランスシステム

賃貸の大家さんなら、こんな風に思いませんか?

「クラウドもいいけど、せっかく自分の物件があるなら、そこで、データセンタばりにサーバー立てたりしたよね」

と。

「なんなら、入居が決まらない一部屋まるごとつぶして、サーバー立てて、そこでクラウドサーバーごっご、みたいな。いや、仮想通貨のマイニング施設にでもするか…?賃貸やるより儲かったりして笑」

とか。

そこまで行かずとも、せっかく入居者向けのフリー・インターネット回線を引いているのだから、もう少しなにかに使えないかな…と妄想してみたりして…。そう。夢は広がるいっぽうです笑。

と、どれだけそこまで考えるマニアックな大家さんがいるかは知りませんが…

さて、かくいう筆者、テック大家さん。実は、必要に迫られて自分の物件の館内にサーバーを立てることになった口です。その秘密が、自物件に導入したオートロックシステム。Comelit製SENSEというイタリア製のおしゃれなエントランスパネルがインターネットサーバーなのだから、仕方ありません。物件の回線を最大限に利用してサーバー構築していこうじゃありませんか!

建物にサーバーを導入するための、IPアドレス関連の技術・知識に関しては以下の記事に譲ります。まだご覧になっていない方はこちらの記事を見てみてください。

というわけで、本日のネタは、建物内部のサーバーをダイナミックDNSにより運用するという内容になります。

ダイナミックDNSとは?

上記でご紹介した以前の記事では、ISPが建物のルーターに割り当てるIPアドレスの種類や特性について述べました。その中で、ISPが割り当てたIPアドレスが動的に変わってしまうケースがあることをお話しました。いわゆる動的IPアドレスってやつですね。

ダイナミックDNSは、このような動的に割り当てられるIPアドレスを固定的な名前(例えば、なんとか.com、なんとかドットコム、のような)でアクセスできるようにする仕組みです。

もう少し噛みくだいていうと、例えば、

https://43.123.123.123:9001/

のように書くとIPアドレスを使ってサイトにアクセス可能です。(上記アドレスは説明用の例なのでデタラメです)そして、ある時点では、このアドレスで建物内部のサーバーにアクセスできたとします。

それが、気がつくとISPの都合でアドレスが変わっていて、

https://43.123.123.31:9001/

のようにアクセスしないと、同じサーバーにつながらないという状況が起こります。これが動的IPアドレスというやつです。

そこでダイナミックDNSの登場です。mybuilding.dynamic-ip-address.comのような名前(ドメイン名)を用意しておき、いつでもこのアドレスで館内サーバーにアクセスできるようにする。この技こそが、ダイナミックDNSなのです。

裏で何をやっているかといいますと…

最初のケースでは、mybuilding.dynamic-ip-address.com=43.123.123.123となっています。もし、ISPがIPアドレスを変えてしまったら、mybuilding.dynamic-ip-address.com=43.123.123.31のように割当を動的に変えてあげましょう、という仕組みです。このようにすれば、ユーザーはいつも、mybuilding…comのように名前を指定すれば館内のサーバーにつなげられますね。

つまり、そこでどうにかして、

  1. IPアドレスの変わったことの検出
  2. 動的IPアドレスの割当とドメイン名の公開

といった2つのことを実現するわけです。この一連の動作を、ダイナミックDNSが裏で実際にやっています。

大家さんの実際のユースケース

なぜ賃貸の大家さんに、ダイナミックDNSの知識が必要になるのか。

ここで、筆者、テック大家さんの具体的なユースケースを紹介していきます。

前記事を読まれていない方のために、少し補足します。

私の賃貸物件に導入したオートロックシステムComelit製SENSEは、テンキーのついたエントランスパネルです。物件の玄関に訪れたお客さんは、部屋番号を押して入居者を呼び出すことができます。ここまでは普通ですね。ま、もっというと、SENSEはデザインもイタリアンでかっこいい、といっておきましょう。

Comelit社のサイトより転載(クリックしてページへ)

しかし驚くのはまだはやい。

このパネルで部屋番号を呼び出すと、入居者自身のスマホのアプリに転送されて、なんと外出先でもお客さん応答できるということ。しかも、カメラの映像付きで。そう。なかなかの優れものなのです。

そして技術的には、この機器(エントランスパネル)こそが、インターネットのサーバーになっているというわけです。筆者テック大家さんが、自分の物件のために、ISPからIPアドレスを割り当ててもらい、ポート開放を行うというネットワーク構築をDIY的に自ら実施。その際、館内設置のルーターに設定が必要になりましたよ、というのが前回までのお話でした。

このオートロックシステムを使うために、入居者はスマホで、以下のようにサーバーアドレスを入力する必要があります。ここで、IPアドレスにすると動的に変わってしまうので、アドレスではなく名前を入れてもらう。するとISPがIPアドレスを動的に変えてしまっても問題なし。こういう作戦です。

Comelit アプリの設定画面でサーバー(エントランスシステム)のアドレスの入力が必要

どうやって実現するか

先程の説明で、ダイナミックDNSはどうにかして以下の2つを実現する必要があると述べました。

  1. IPアドレスの変わったことの検出
  2. 動的IPアドレスの割当とドメイン名の公開

これらを実際にどのように実現するか、考えてみましょう。

IPアドレスが変わったことの検出

最初のポイントです。IPアドレスが変わったことが検出できるのは、割り当てられている機器にほかなりません。

前回の記事で使った概念図を再掲します。以下のように、ISPの動的グローバルIPアドレスが割り当てられるのは、建物に設置するルーター(NAT)です。

動的IPアドレスが割り当てられるのは、ルーター(NTA)だ。IPアドレス変化の検知もここで可能。

最近は家庭用のWiFiルーターにもダイナミックDNSの設定画面があるものがあります。後述の表にあるように、各メーカー毎にいくつかの方法によりダイナミックDNSに対応しています。どのメーカのモデルでも大抵、ユーザにどこかのサービスに登録をしてもらってサービス固有の設定をします。いずれにしても、ルーター自身がIPアドレスが変わったことを検出して、名前とIPアドレスの組み合わせを動的に更新していくのです。

ちなみに、ルーターに割り当てられたIPアドレスを知るのに便利なサイトがあります。ルーターの内部の機器からアクセスすると、ルーターのWAN側のアドレスを表示してくれるというものです。ダイナミックDNSで設定されるIPアドレスが正しいかどうか確認するなどの目的で使用できます。

ルーターのWAN側アドレスの確認方法に関しては、以下の別記事で詳しく書きました。こちらもあわせてご覧ください。

動的IPアドレスの割当とドメイン名の公開

では、動的IPアドレスに名前をつけましょう。

どうやって?

それをやってくれるサービスがあります。有名どころは、NO-IPというサービスです。こちらは2000年頃からやっている老舗です。アカウントを作成してNO-IPのサイトで、設定すると自分で好きなホスト名をつけることができます。ただし、好きなホスト名といっても、完全に自由に名前をつけられるわけではありません。"ddns.net"、"ddnsking.com"といったNO-IPが用意したドメイン名に対して、サブドメイン、つまり、 “xxxx.ddns.net"のような形で、xxxxの部分に自分で名前をつけることになります。

NO-IPは、独立系のサービスとしてダイナミックDNSを運用していますが、一方、家庭用ルーターメーカーがサービスを提供しているケースもあります。

例えば、YAMAHAはBuffaloといったルーターメーカーは自社の製品のユーザー向けにダイナミックDNSサービスを提供しています。

YAMAHAの場合は、「ネットボランチDNS」という名前で、ダイナミックDNSを提供しています。Buffaloの場合は、「バッファロー・ダイナミックDNSサービス」という、そのものズバリの名前でサービスをしています。Baffaloのサービスは月額3600円の有料サービスです。どちらのサービスもNO-IP同様、サービス側が提供するドメイン名の一部を自分の好きな名前にすることで識別できるようにするものです。

このようなダイナミックDNSサービスにアカウントを作るなどして、固定の名前を取得するわけです。これにより、動的にIPアドレスが変わっても建物内部の独自サーバーを運用することができます。便利ですね。

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Comelitはよくできていた

さて、ダイナミックDNSを使うと動的IPアドレスのISPでも、賃貸建物内部のサーバーにアクセスできるようになったテック大家さん。話を戻すと、筆者テック大家さんがやりたかったのは、自身の物件に導入したオートロックシステム、イタリアComelit製のSENSEをサーバーにするということ。

実は、導入時点で、代理店であるナカヨさんに言われました。「ComelitがダイナミックDNSサービスをやっていますよ」と。

ですので、物件設置のルーターにわざわざダイナミックDNS設定をしなくても、Comelitの製品とクラウドの仕組みで動的IPアドレスを使ったオートロックシステムが完結するのです。

もちろん、Comelitの機器にダイナミックDNSの設定が必要なのですが、ルーターが置き換わったりした場合でも、ダイナミックDNSの設定を変更しなおす手間が省けます。

すばらしい。よくできています。

各社ルーターのダイナミックDNS対応状況

万一Comelit社のようなクラウドシステムを使わず、それでもダイナミックDNSが必要です、という場合は前述のようにルーターの設定で対応できます。

ここでは、各社の家庭向けルーターのダイナミックDNS対応状況をまとめておきます。

以下は、ネットで調べられる範囲で調べました。メーカー毎の対応状況をしてしていますが、そのメーカーのどのモデルが対応しているかまでは調査しておりません。実際に以下を参考に購入される場合は、対応済みの機種かどうか改めてご確認ください。

以下の表は、家庭向けルーター市場における各社のダイナミックDNSの対応状況に関して、概略をつかむ目的でみてもらえるとありがたいです。

ルーターメーカーダイナミックDNS対応状況料金
バッファロー独自サービス:「バッファロー・ダイナミックDNSサービス3,600円/年
NECお名前.com:「ダイナミックDNSは使えますか?
Bigblobe:「ダイナミックDNSサービス」(サービス終了済)
無料
200円/月
IO Data独自サービス:「IO Portal無料
エレコム独自サービス:「SkyLink DDNS無料
TP-LinkNO-IP
Dyndns.com
Comexe.cn?
無料
55USD/年
NetgearNO-IP (設定方法無料
LinkSysDyndns.com55USD/年
ASUSNO-IP
Dyndns.com
など、複数。(FAQ: DDNS 設定方法
無料
55USD/年

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プロフィール

テック大家さん
ソフトエンジニア兼不動産オーナー。
某超有名日本メーカーにおいてソフトウエア開発畑を30年近く勤務。
かつてはWindowsのアプリ開発や、組み込み機器のソフト開発を行う。プロジェクトマネジメント・オフショア開発・要件管理などの経験あり。現在は、個人開発で、JavaScript/TypeScript/React/Express、PHP/Laravel、Firebase、Google cloud、Arduino(C++)などでプログラミングを楽しむ。
サラリーマンの傍ら不動産経営を始め、現在、1棟モノの賃貸4物件を東京・神奈川に所有。夫婦でおよそ20年の賃貸経営の実績。
最近の物件では、入居者向けフリーWiFiなど、テック系の設備はDIYで自ら構築。
海外MBA取得。