セキュリティ・カメラのPoEという仕組みについて
本日は、PoE(Power over Ethernet)という技術について「テック大家さん」が解説していきます。
最近は、セキュリティ・カメラの電源供給用の仕組みとして使われることが多いこの規格。本日は、昔話も交えて見ていくことにします。
イーサーネットを知っていますか?
PoEはPower over Ethernetの略です。日本語に訳すとイーサーネット上の電源ですが、そもそも、読者のみなさんはEthernet(イーサーネット)とは何か知っていますか?
近頃の若者は、生まれた時からスマホが世の中にあるような世代です。ネットといえば無線でつながるもので、ネットを「線」でつなげることができるなんて思いもよらないかも知れません。が、しかし!イーサーネットはその昔、そう、昔の話として言ってしまいましょう。物理的な「線」でネットワークを構築していて、イーサーネットとは、そのための技術のことをいうのです。
「その昔」と言ってしまいましたが、実は現役です。以下の写真のようなケーブル(CAT 5eというタイプのケーブル)を見たことがありますか。あなたのお父さんが家の中にWiFiを設置するために、せっせとつないでいるかもしれませんよ。
このような有線ケーブルを使ってインターネットの通信を実現する技術をイーサーネットというのです。
ついでにちょっと昔話をします。
上の写真は、現在よく使われているツイステッドペアケーブル(Wikipedia:ツイストペアケーブル)と呼ばれるもの。ケーブル内にもっと細いケーブルが何本もあってそれぞれ2本の線をより合わせあります。
ですが、私がまだ幼い工学系大学の学生だった頃、イーサーネットのケーブルはこんな形のものではありませんでした。私が大学時代に使っていたイーサーのネットケーブルは同軸ケーブルです。転送速度も10M bps。当時は、10M を冠した10BASE2とか10BASE5とかいった名前のイーサーネットの規格が使われていました。同軸ケーブルは末端にターミネーター(終端装置)なんかも必要で、配線が面倒だった記憶があります。ネットワークを分配するハブも大きかったし、ネットワークにつなぐのはパソコンではなく、ワークステーションと呼ばれるコンピューターでした。
ところが今や、家庭のインターネットですら数G(ギガ)ビットの世界。しかも、WiFiで無線が主流。隔世の感を禁じ得ませんね。
PoEとは?
PoEとは、上記のツイステッドペアのネットワークケーブルにおいて、そのケーブルに直流電源を乗せ、接続している機器の電源を供給する仕組みです。PoEはPower over Ethernetの略。ネットワーク機器の電源を別に取ることなく、ネットワークケーブル1本で「データ」と「電源」を同時に取れるのがメリットです。
電源はPoE HUB(ハブ)という、通常ならばネットワークのデータを分配する機器が担当します。すると、以下の図のような形で、機器側の電源ケーブルの配線が不要で、ネットワークケーブル1本接続するだけになります。配線がスッキリするわけです。
ただし、上図のように、セキュリティ・カメラなどの電源を供給される機器と、HUBなどの供給する機器の両方がPoEに対応している必要があります。
また、電源供給は「インジェクター」という機器を使うこともできます。その場合は、以下のような接続になります。
この場合、ネットワーク機器(セキュリティ・カメラ)とデータ供給用のHUBとの間に、インジェクターが入ります。インジェクターの設置場所の検討は必要ですが、ネットワーク機器は、相変わらず、ネットワークケーブルを一本つなげばいいわけです。
さてここで、一つ専門用語を入れておきましょう。
上記の説明では、電源の供給する側と、電源供給を受ける機器という説明をしていました。それぞれ、PSE(Power source equipment)とPD(Powered device)という用語で呼ばれます。文字通り、電源供給設備、と電源受けた機器、という略語ですね。
上図だと、PSEはPoE HUBやインジェクターのことを示し、PDはセキュリティ・カメラ、ということになります。
PoEの使い道
PDはIPネットワークで使う機器ならばなんでもよいのでしょうが、なんと言っても通常目にするのはIP式のセキュリティ・カメラです。
オフィスなどでは、IP電話器(VoIPの電話機)が使われるケースもあります。筆者がサラリーマンとして勤めていた会社でもIP電話機がネットワークケーブル一本で接続されてたのを見ました。しかし、今やオフィスの電話なんて時代遅れ。ZoomでもLINE電話でも、パソコンやスマホを使えば遠隔地のコミュニケーションは取れます。
そういう意味でも、なんといってもPoEのPDとしてはセキュリティ・カメラを取り上げるべきでしょう。
例えば、Amazonでも中華製と思われるPoEのセキュリティ・カメラが多く出てきます。いくつかリンクを貼っておきます。
テック大家さんが自分の物件「ハイドレンジア箱根」に導入したオートロックシステムにもPoEが使われていました。ComelitというイタリアのメーカーのSENSEという機器ですが、このシリーズの製品群も機器同士の接続はPoEにより”ネットワークケーブル1本”を実現しているようです。こちらは、別記事に詳細を譲ります。
いずれにしろ、IPネットワーク(LAN、ローカルエリアネットワーク)に機器をつなぐ際に、電源を取りにくい場所に設置するようなものは、ネットワークケーブル一本が便利。そういったユースケースで使われる機器はPoE対応しているものがありがたい、ということのようです。
PoE機器と非PoE機器を混在できるのか
ここで一つ疑問が浮かびます。
PoE対応のHUB(PSE)を導入したとして、そのネットワークにPoEに非対応な機器を混在させることができのかという疑問です。
この疑問に対する答えは、PoEの仕組みを理解すれば自ずと出てきます。PoEの規格では、PSEにネットワーク機器がつながった際にパルスを送出し、相手機器がPoE対応機器かチェックします。このパルスは、PoE以外の機器に対しても影響のないレベルで送出されます。ここでネゴシエーションが行われ、PSEは相手機器をClass 1〜3のどのレベルの機器なのかを検出します。そして、判断したClassによって出力電圧を変えるという制御をPSEが行います。
このようにプロトコルレベルでPD機器の判断をしているので、非PoE機器でも問題なくつなげることができるというわけです。
それを証拠に、例えば、手元にあった以下のPoE対応スイッチング・ハブ(SecuSTATION SC-PSH82)では、以下の写真のように、コネクターの部分にPoEを示すLEDランプがあります。
PoE機器(PD)が正常に認識されて、電源供給が始めるとここが点灯するので、給電中かどうか判断できます。よくできていますね。
テック大家さんはPoEを導入したのか?!
筆者テック大家さんは自分の一棟もの賃貸マンションのフルリノベを契機に、物件にセキュリティ・カメラを導入しました。その様子は別記事に書いたとおりです。
じゃ、当然、PoEを使っているよね、と言いたいところです。が、しかし、実はPoEを導入しませんでした。
「おいおい、ここまでPoEの話してきてそれはないだろー」
と怒られそうですが、実際そうなのです。
では、なぜ、テック大家さんはPoEを導入しなかったか。2つ理由があります。
一つは、PoE機器の値段が高いから。このサイトでも何度もお話ししていうるように、テック大家さんは何でも自分でやって少しでもコストを抑えて、入居者に最大限の価値を提供しようという考え。だから館内のフリー・インターネットもDIYだし、WiFi導入もDIY。この考えを元に、セキュリティ・カメラのシステムも、少しでも安く抑えたかったたわけです。
もう一つの理由は、PoEを利用しなくても、別の方法を使って、電源供給をネットワークケーブル1本で済ませることができたから。その秘密は、以下のAmazonのリンクにあるような数百円の怪しい(!)ケーブルの使用です。これについては別記事で解説しています。こちらも合わせると、お楽しみいただけます。
今日はここまで。最後まで読んでいただき、ありがとうございましたー
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