EdgeTech+の基調講演を聞いて 生成AI後の世界で必要なのは〇〇を公開すること
先日、EdgeTech+ 2024というイベントに出かけてきました。基調講演をいくつか聞いたのですが、その中の一つで、組み込みOSのTRONで有名な坂村 建さんが「生成系AIが革新する組込みシステム開発の未来」というタイトルで講演されました。
本日は、その基調講演で出た話題で少し語ります。
生成AIの登場で変わった組み込み機器のインターフェース
講演では、TRONを含めて組み込み機器のソフトウェア開発において、生成AIがどう役に立つのか、という話を中心になされていました。その中で、筆者が特に注目したのは、組み込み機器のインターフェースに関する議論です。
生成AIはプログラミングが得意です。生成AIの力を借りてプログラミングするのが現在のトレンドになりつつあります。誰でもかけるような一般的なプログラミング作業はすでに人間が行う必要のないものになっています。
講演で例に上がっていたのは、OSのバージョンアップに伴うポーティングの例です。古いバージョンのTRON用に書かれたコードを新しいバージョンのOSに対応する作業があります。このような作業はもう人間がやる必要はないのです。生成AIがちゃんとやってくれます。
組み込み機器間の通信プログラムも同様。
以前なら、機器同士の通信をするために「インターフェースの共通化」がしきりに議論されていました。つまり、機器間で共通のインターフェースを実装していれば、コミュニケーションを行うためのプログラムが簡単に作れる、という発想です。
しかし、生成AIがプログラミングする世界では、インターフェースが共通である必要性は低下します。なぜなら、異なるインターフェース間で通信するプログラムなど、生成AIがあっという間に作ってしまうからです。生成AI後の世界では、単にインターフェースが「公開されていること」が重要になってきます。
インターフェース仕様がネットでオープンになっていれば、生成AIが適切なプログラムをあっさり書いてくれるというわけです。
講演では、日本の家電製品が世界の中で遅れていった理由を説明していました。曰く、日本のメーカーは「囲い込み」の発想でものを作る。一方、海外のメーカーは「オープン」にする。この違いにより、日本の製品が世界的に見て遅れていったと。
オープンなインターフェースを持つ機器を推したい
筆者が本ブログ「テック大家さん」で幾度となく取り上げているSwitchBot製品群があります。筆者がSwitchBotを推す理由もインターフェースの「オープン性」にあります。
以下の記事で想いを語っておりますので、併せて御覧いただけると幸いです↓
SwitchBotのような数々のスマートホーム家電商品を商品化しているメーカーが、自社製品すべてのWebインターフェース仕様(Web API仕様)を公開している。筆者はこの事実を製品を選択するメリットと考えています。
ちなみに、インターフェース仕様はSwitchBotの独自仕様です。それでも公開されている事自体が意味があるのです。
なぜなら、公開されていれば、プログラマーが独自のシステムを構築し、単品の機能以上にシステムとして拡張していけるというメリットがあるのです。
そして生成AIが能力を持った現在、プログラマーが自分自身でプログラミングする必要すらありません。公開されたAPIの仕様を「学習」した生成AIが、その仕様を元に実装してくれます。これはスゴイことです。
インターフェースが公開された家電(スマートホーム製品)はSwitchBotだけの話ではありません。例えば、フィリップスのHueというスマート電球もAPIがオープンです。
このような機器を連携させるシステムを作るのは以前は人間の仕事でした。今なら生成AIがやってくれます。現状の生成AIは、人間がある程度、実行環境やらデプロイ方法などを考慮してプログラミングの依頼をしないといけません。ですが近い将来、それすら不要になるでしょう。
そうなると、誰でもスマートな家電を連携するシステムが作れる時代がもう目の前にある、というわけです。
人間が考えるべきは「気の利いた自動化」か?!
講演で坂村さんも述べていましたが、実は機器間で連携ができたとしても、「気の利いた自動化」をするのは結構難しいものです。
筆者自身もSwitchBotを使っていくつか家庭内のスマート機器の自動化を試みたのですが、満足が行く自動化はそう簡単にできるわけではないことを経験しています。
例えば、センサーの値を使って照明をつける、というプログラミングはちょっと腕に自信があればすぐできます。ただし、それだけだと、周りがちょっと明るいと反応しない、とか、消すタイミンはいつか、など、「いい感じ」に電球を点けたり消したりするのは細かい調整が必要になります。その塩梅が結構微妙なのです。
こういう感覚的な要素は、たとえ生成AIがささっとプログラミングできるからと言って、一朝一夕に実現できるようなものではありません。体験の心地よさを実現する仕様を言語化すること自体が難しいのです。
生成AIがプログラムする世の中では、人間こそが、このような感覚的な部分を考えるべきなのでしょう。
エンターテインメントとしてプログラミングを楽しむという発想
ついでに述べると、筆者はzennので書いたのように、将来的にはプログラミングは人間が仕事としてやるのではなく、エンターテインメントとしてやるべきだろうと考えています。
安く食器が大量生産されてニトリで簡単に購入できても、陶器の食器を釜で焼くのが趣味として成り立つように。
または、工事業者に頼まずにDIYで自宅の改修を趣味として楽しむように。
プログラミングを知的好奇心を満たす楽しみとして行う。そんな考え方もアリなんじゃないでしょうか。
ご興味があれば、以下のzennの投稿も併せて御覧ください。
では、今日はこの辺で…
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