PoEの機器を買わなくてもいい!PoEインジェクター・スプリッター・キットという不思議なケーブルを使ってみた
筆者、テック大家さんは所有する賃貸マンション「ハイドレンジア箱根」にセキュリティ・カメラを導入しました。
本日の記事は、このネットワーク接続のIPカメラの電源の引き回しがテーマ。Amazonで売ってた怪しい(?!)不思議ケーブルを使いました。ものは以下の写真ようなものです。
商品名や商品カテゴリは、PoEインジェクター・スプリッター・キットと言ったりしているようですが、よくわかりません。
これを実際に使ったので、その使用レビューと考え方を解説していきます。
これはPoEインジェクターなのか?
前回の記事で、PoE(Power over Ethernet)の解説をしました。その中で、PoEという技術が、ネットワークケーブル一本で電源とデータを両方送ることができるようにする技術だ、というお話をしました。
その中で、PoEの規格の話をしました。PoEは歴としたインターネットの規格として定義されているものです。PSE(Power source equipment: 電源供給側)とPD(Powered device: 電源受給側)が接続された際に、きちんとネゴシエーションにより相手機器を認識します。その上で、PSEは相手であるPDの”クラス”に応じた電源電圧を送るという仕組み。
上の記事の中でもPSEの一つとして、「PoEインジェクター」というツールをご紹介しました。以下のようなものです。
この商品は日本メーカーの商品で5千円弱の製品。ところが、今日のテーマであるPoEインジェクター・スプリッター・キットと謳うAmazonの商品リンクは数百円のものです。
中国製だからでしょうか。いえ。どうも、そいう話ではないでしょう。このケーブルは、いわゆるPoEの規格がいうところの「PoEインジェクター」ではないようなのです。
「PoE…」とは名ばかりのケーブルだ
この製品(ここでは、単に「キット」と呼びましょう)の、”PoE”とは名ばかりです。
実際にはネットワークケーブル(CAT5eなど)に電源電流を通すための分配器のようなものです。それを証拠に、このケーブルを使ってPoE機器を動作させようとしてもうまくいきません。
実は当初、筆者テック大家さんは、PoE ハブに非PoEのセキュリティ・カメラをつなぐつもりで購入しました。以下の図のような接続のイメージです。こうしたかったのは理由があります。これができれば、セキュリティ・カメラ設置場所の近辺にAC100Vの電源コンセントがなくてもいいのです。しかも、PoE対応の高価なカメラでなくてもいいはずです。
でも下図の使い方だと、キットに入っている1個のケーブルしか使いません。おかしいな、と思いました。そして、実際に非PoE機器にPoE ハブから電源供給させようとしても動作しません。なぜならば、つないでいる機器が非PoEなのでPoEハブは電源供給しないのです。PoEのプロトコルとしては、相手機器をPoEと認識しないと供給しない仕組みだからです。
というわけで、上記の方法で実現したかった、セキュリティ・カメラ設置場所の近辺にAC100Vの電源コンセントがなくてもいいという夢は、残念ながら消えたのでした。
非PoE機器にネットワークケーブルで電源を送る
では、このPoEインジェクター・スプリッター・キットは無駄な買い物だったのでしょうか。
いえ、そんなことはありません。この数百円のキットが、課題の解決に一役買うことになりました。
テック大家さんが解決したい課題は、
- (非PoE機器の方が安いので)PoE機器は買わないでシステムを組む
- 非PoE機器でも設置場所に100V電源を用意しない(そのために、ネットワークケーブル一本で電源とデータを送る)
ということでした。
下の写真のように使います。
2つのケーブルは、セキュリティ・カメラ側とハブ側の両端で使います。カメラ側は、ブルーのネットワークケーブルから文字通り、データと電源をスプリット(分割)します(上写真の左側)。スプリッターの電源側のケーブルは、セキュリティ・カメラの、本来付属の電源アダプタをつなぐ端子に接続します。
上写真の右側はハブがつながっていますが、その直前でインジェクター(と呼ばれるケーブル)をつなぎます。そして一方はハブに、もう一方はセキュリティ・カメラ付属の電源アダプターの出力を接続します。
このようにすると、ネットワークケーブル(CAT5eケーブル)上をカメラの電源アダプタの出力電流(DC、直流)が流れることになります。
ポイントは、セキュリティ・カメラもハブもPoE非対応の機器でよいという点です。PoE非対応の安い機器同士でも擬似的に”ニセPoE”をやることで、カメラの設置位置近辺に100V電源がなくても、ケーブル一本でデータと電源を通せる、ということなのです。
なるほど。すごい!
ところで、このキット。ネットワークケーブルに電源も流すという意味では、確かにPoE=Power over ethernetというネーミングは悪くないような気もします。しかしIEEEでいうところのPoEではない、と筆者は認識しています。
というわけで、この不思議ケーブルは、単に「ネットワークケーブルのPoEの電源が流れる線に、機器の直流電源を乗せてあげますキット」だったのです。
セキュリティ・カメラの選定については、以下の記事に詳しく記載しております。中国の低価格のIPカメラはどんなものなのか、実際に導入したモデルについて書いております。合わせてご覧いただくと楽しめます。
カメラだけじゃないWiFi APも
さて、これで気を良くしたテック大家さん。セキュリティ・カメラだけではなく、WiFiルーター(アクセスポイント)も同じ仕組みでAC100コンセント設置なしを実現できるのではと考えました。
以前の記事で、ハイドレンジア箱根館内のフリーWiFiをDIYで大家自ら設置したというお話をしました。
その際に導入したのが格安のホームWiFiルーター。TP-Link製のものでAnchor C50というモデルです。
こちらの商品は、AC100VからDC9Vに変換するアダプターが付属しています。そしてこのアダプターの端子が、今回ご紹介のPoEインジェクター・スプリッター・キットの電源端子の径にピッタリ一致します。さすがは中国製。無駄がない(?!)。
PoEなら相手機器のネゴシエーションで電源電圧を確定するわけですが、Anchor C50は当然PoE非対応です。ハブ側(レイヤー2スイッチ)とC50側で電源電圧を合わせる、つまり、この線にはC50しかつながないことを保証するのは設置する私テック大家さんの仕事。間違いのないようしっかり確認した上でネットワークケーブル上に電源を通すわけです。
これで、しっかりと動作するようになりました。結果、100V電源はレイヤ2スイッチや他のネットワーク機器があるMDFとよばれるボックスの中のみにあればいい、という世界が実現できました!
めでたしめでたし。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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