ノートパソコンで”デュアルブート” Win11とUbuntuを共存 デュアルブートを解説
筆者「テック大家さん」は、最近はMacbook Proを使っています。以前は、Dellのパソコンを使っていたのですが、娘の大学に進学とともにそれを引き渡し、Macbook Proになりました。
ところが最近、娘が新しいパソコンを買うというので、それまで使っていたDell(Inspiron 14 5425)がまた手元に戻ってきました。ラッキーです。ということで、Dellを少しまた使ってみようと思い立ち、セットアップを開始したのでした。
さて、自分で言うのもなんですが、テック・おたくの著者がDellのWindowsパソコンをそのまま使うはずがありません。
やっぱ、Linuxを使いたい。だからといって、Windowsが不要なわけではなく、何かのときにたまにはWindowsも使いたい。
そこをどうするか?と言う話をしていきます。と、そのまえに、Linuxって知っているよね…?
Linuxってなに?
この記事にたどり着いた人がLinuxを知らないとはとても思えませんが、まずは軽くLinuxについてお話しましょう。
世の中にAndroidスマートホンとiPhoneの2つの勢力があるように、パソコンのOSにもWindowsとMacという2大勢力があります。
AndroidスマートホンはSamsumgやSonyのようにいろいろな会社がAndroidスマホを販売しています。同じように、MicrosoftのWindows OSを搭載したパソコンは、ASUSやLenovo、Dellなどさまざまなメーカーから販売されているのはご存じの方も多いでしょう。
対象的なのがAppleです。
MacにはmacOSというOSが入っていますが、このOSやその上で動くアプリを使いたければ、Appleの製品を買うしかありません。iPhoneがAppleからしか発売されていないように、macOSも完全にAppleで完結しています。
ここまでの話は、「スマホとパソコン、状況似ているな〜」という話でした。ところが、ことパソコンに関して言うともうWindowsとMacの他に、一つ忘れちゃならない勢力があるのです。それが、LinuxというOSの存在です。
LinuxはオープンソースのOSです。WindowsやmacOSはメーカーが開発していて、中身(ソースコード)がわかりませんが、オープンソースであるLinuxはOSのソースコードが公開されています。見る人が見れば中身がわかるのです。世界中の開発者が開発に貢献していて、多くはボランティアです。したがって、どこかのメーカーがLinuxパソコンを販売している、と言う状況ではありません(無くはないですが、少ない)。
では、LinuxのOSはどんな機械で動作するのかと言うと、なんとWindowsパソコン、ということになります。WindowsパソコンにLinuxをインストールすると、Linuxパソコンに早変わり、というわけですね。
ただし、Linuxは「OS」なのでWindowsのアプリをインストールする感覚ではありません。まるっとパソコン全体が「Linux ワールド」になります。つまり、電源を入れたところからLinuxが走り出します。必然的に「画面」に映るものはWindowsとは全く違う「画面」になってしまう、というわけ。
ディストリビューションとUbuntuというOS
ここまで、Linux OSの説明をしていましたが、Linuxに関して言うともう一つ忘れちゃならない「文化」があります。それが、ディストリビューションという用語が示すもの。Linux OSをインストールしたいからといってネットで”Linux OSインストーラー”のようなものを探しちゃいけません。
LinuxというのはOSのコア(もっとも狭い表現ではカーネル)でのことです。それだけだと普通の人はまともに使えません。OSの上に様々なコマンドやら、設定やら、アプリのインストールやらを施した状態にしなければ、一般ピープルはとてもとても使える代物ではないのです。
そこで、オープンソースの世の中では、Linuxを使える状態にしようと、いうことを専門にする人たちが多数あらわれます。そして、そのような人々がパッキングしてくれた成果物が「ディストリビューション」というわけ。
ディストリビューションの形になっていれば、インストーラーもあるし、インストールしてしまえば様々なコマンドやアプリが利用できる状態になっています。これならWindowsやmacOSをつかう雰囲気でパソコンを操作できます。ただし、WindowsとmacOSで操作性が違うように、Linuxの操作もそれらとは違います。さらに話がややこしいのは、ディストリビューションによっても操作性が違うのです。
ディストリビューションは世界中の様々な人が、さまざまに開発、構築、することができます。ということは世の中には多数のディストリビューションが存在するのです。それらは互いにいいところは取り込んでいるものの、最終的には見た目も操作感もそれぞれ異なるという状況になっています。
なので、コアはLinuxで一緒だけど、ディストリビューションが違うと、”別のOSに見える”というわけ。ここがLinuxというOSの難しいところ。いや、一番面白いところ、なのです。
考えても見てもみてください。
先程、Linux OSは普通に売られているWindowsパソコンで動作する、と言いました。そして、Linuxは様々なディストリビューションが配布されている。ということは、WindowsパソコンをmacOSに入れ替えるみたいに、画面デザインや操作感が全然違うパソコンに変身させることができるのです。それも、世にあまたあるLinxuディストリビューションの中から、自分のお気に入りのものをチョイスする、という自由を手に。
これ、おもしろくないですか??
ディストリビューションの世界はまさに玉石混交。そんな中でもこなれている”OS”がいくつかあります。筆者のお気に入りは「Ubuntu」というディストリビューションです。安定していて、ユーザーも多いので好きです。安心して使えます。
ですので、今回、DellのノートにはUbuntuを入れることにしました。
ちなみに、ディストリビューションは通常短く「ディストロ」と呼ばれます。なんでも短くするがあまり好きではないので、筆者は使わない言葉ですけど、ディストロ…、はい。
WindowsとLinuxを両方手中に収める選択肢
冒頭に書いたように、LinuxとWindowsを両方使いたい、という場合、我々にはいくつかの選択肢があります。
昨今は「仮想化」が流行っています。つまり、WindowsでVMWareやVirtualBoxなどの仮想化ソフトをインストールして、その仮想環境の中でLinuxを立ち上げる、というやり方です。それが1番目の選択肢。
2番目の選択肢は、MicrosoftがWindowsに搭載しているWSL(Windows Subsystem for Linux)を利用するというもの。
WSLはWindows OSの中に組み込まれたLinuxを動作させるための仕組みです。1番目の仮想化のやり方では、Windowsの一つのウインドウの中にLinuxのデスクトップが出てくるのでそのウインドウの中でLinuxワールドが閉じます。一方、WSLでは、Windowsときちんと統合されてWindowsアプリもLinuxアプリも同じような操作感で使える、と言うメリットがあります。WSLも、リリース当初はGUIアプリを使えませんでした。つまりCLI、コマンドラインのみが使える状態。その後のバージョンアップでLinuxのGUIをアプリの対応がなされました。素晴らしいです。
3番目の方法は今回私がとった「デュアルブート」です。詳細は後述します。
WindowsとLinuxを共存する方法をまとめると、ざっくり以下の3パターンになります。
- 仮想化ソフトで仮想環境を構築
- WindowsのWSLを使う
- ディアルブート
デュアルブートとは?
前述の3番目の方法が、本日のメインテーマ「ディアルブート」。
パソコンのSSD(所謂「ストレージ」)に、WindowsとLinuxを別々にインストールしておき、必要なときにどちらかを選択して使う。このような使い方を「デュアルブート」といいます。
この方法では、電源を入れた直後からLinux が走り始めます。BIOS(電源投入したら動作するソフトウェア)でWindowsで使うのか、Linuxで使うのか、切り替えることができます。
1番目や2番目の方法のような仮想化では、OSを切り替えたければウィンドウを切り替えるだけで済みます。一方で、デュアルブートでは、OSを切り替えるたければ電源を入れ直す必要があります。WindowsとLinuxを頻繁に切り替えて使いたいなら、これは大きなデメリットと言えます。
一方、「デュアルブート」の最大のメリットは、OSが本物のハードウェアを制御することです。電源を入れてからLinuxが立ち上がるということは、もうそのパソコンはLinuxパソコンと同等です。本物のハードウエア上でOSが動作します。ということは、仮想化に伴うパフォーマンスの低下がないということです。
一般的に仮想化は、ハードウェアが実際には存在しないのに、ソフトウェアで「あるふり」するものです。そのためにはソフトウェアがCPUを使って余計な処理を行わなければならないのです。その際、大抵オーバーヘッドが発生します。
仮想化しなければ、ハードウェア性能マックスで使える。カメラとかネットワーク、BluetoothといったハードをOSが直接制御できる。なので、(Linux用のドライバーが正しく動作さえすれば)反応がわるいとか、処理が遅いとか、画像や音声などの品質が悪い、といった性能低下が避けられます。一番安全で安心して使えるわけなのです。
普段はLinux (Ubuntu)メインで使っていて、何かのタイミングでたま~にWindowsをつかう。そんなユースケースであれば、性能マックスで使えるデュアルブートはメリット大です。
デュアルブート環境をつくる手順
本記事では、細かい操作手順は説明しません。代わりに、概念としてまたは、デュアルブート環境を作る作業として、どのような事柄が必要になるのかを解説していきます。
ディストリビューションをダウンロード
まずは、自分が好きなディストリビューションを選んでダウンロードします。大抵、ISOイメージというものが公開されているのでダウンロードします。どんなディストリビューションを選ぶかによりますが、大抵ISOイメージは3〜6Gバイト程度あります。
筆者の場合は、UbuntuなのでCanonicalという会社のサイトからダウンロードします。バージョンは24.04.1 LTS版を入れました。
Linuxは複数のプラットフォームに対応しています。場合によってはmacのハードウェアでも動作します。筆者の場合はDellのAMDのCPUを搭載したDellのノートパソコン(Inspiron)にいれるので、X86-AMD64用のイメージを取ります。
ブータブルUSBメディアを作る
RufusのようなUSBブータブルイメージを作れるツールで、USBにISOイメージをコピー(インストール)する。
このイメージには、インストーラーが入ることになります。後ほど、パソコンを(SSDからではなく)USBイメージから起動します。起動すると、Ubuntuのインストーラーが立ち上がるので、あとはそれに従ってインストールすればOKです。
BIOSの設定を変える
最近のパソコンはウィルスなどの悪者から自身を安全に保つために、セキュアブートという仕組みがあります。また、Windows側でもProバージョン以降は、Bitlockerというストレージを暗号化する仕組みがあります。
この状態だと、UbuntuなどのLinuxディストリビューションがインストールできないので外す必要があります。
BitlockerはWindows上で無効にし、セキュアブートはBIOSの設定で変更します。
BIOSはパソコンメーカー毎に異なるのですが、大抵パソコンの電源を入れた直後に[F2]キーとか[F12]キーを押下すると設定画面が出ますのでそこで変更することになります。
Windowsのパーティションを分ける
SSDの一部分をUbuntuように明け渡す必要があります。一般的にWindowsパソコンは、SSDの容量の中でWindowsが目一杯使っています。それを小さくする必要があります。「パーティションを分ける」という作業です。
このようにすると、SSDが512Gbyteとして売っているWindowsパソコンでも、エクスプローラーから見るともっと小さいSSDを搭載しているかのように見えるようになります(例えば、128GbyteのSSDと表示される)。
さて、この「パーティションを分ける」作業は、Windowsの「記憶域」の設定で行えます。Windowsのパーティションを小さくすればよいのです。これで、残りの領域を別のOSが使えるようになります。
最近のUbuntuのインストーラは、インストールの過程でそれをやってくれるようなので、「記憶域」の設定を行わずとも、インストーラーにおまかせすることもできます。
インストール
一般にWindowsパソコンは、BIOSの設定を変更することでUSBメディアから起動できます。先程のRufusで作ったUSBブータブルメディアをパソコンに差して電源を入れると、BIOSの設定次第でUSBメモリーからOSが起動します。
BIOSによっては設定変更すること無く、USBブータブルメディアが刺さっていることを検知して、そのプログラム(この場合Ubuntuのインストーラー)を起動する場合もあるかもしれません。
いずれにしろ、USBブータブルメディアから起動すると、Ubuntuのインストーラーが起動するので、その画面に従ってインストールすればOKです。
一番気にしなければいけないのは、Windowsが入ったパーティションを削除しないように注意することです。先にも書いたように、UbuntuのインストーラーはWindowsのパーティションを小さくして、空いた部分にUbuntuのOSをインストールできます。
筆者の場合は、インストーラー画面でWindowsに割り当てている場所を半分程度にしました(後述)。
2つのOSが入ったストレージ
さて、以上のような手順で完成したDell InspironのSSD(ストレージ)の中身をご紹介しておきましょう。今回、筆者のパソコンは512GバイトのSSD搭載のモデルですが、およそ半分の250Gバイト程度をWindows11に与え、210Gバイト程度をUbuntuにしてみました。
その様子は、各OSが用意するストレージを確認する設定ツールで確認できます。
UbuntuのSSDドライブの中身を見る「gparted」というツールのスクリーンショットは以下のようなものです。
WindowsのパーティションとUbuntuのパーティションがほぼ半分ずつに分けられていることがわかるでしょう。
同じパソコンをWindows11で起動して、Windows付属の「ディスクの管理」で見ると以下のように見えます。(Ubuntuのgpartedと物理的に同一のストレージの中を見ていますが、「ディスク管理」だと、微妙にすべてのパーティションを表示しているのではないようです…)
さて、デュアルブートシステムでは、このような2つのパーティションに入っているOSを切り替えて使うわけです。
切り替えを行うのがBIOSの設定画面です。
Dellの場合、パソコンの電源を押してすぐに[F12]キーを押していると、以下のようなBIOSのBoot Managerの画面が登場します↓(インストールに失敗してUbuntu項目が2つ出ちゃってますけど…)
この画面でどちらのOSを起動するかを選択します。(デフォルトはUbuntuにしています。というか、勝手にそうなっちゃいました笑)
ハマりポイント
筆者がハマったポイントをちょっとだけご紹介しておきます。
Ubuntu(24.04.01)のインストーラーは、システムがBitlockerを使っていると途中で無言で停止するようでした。
筆者のDellのInspiron 14 5425というモデルは購入時はWindows 11 Homeが標準でした。HomeバージョンではBitlockerは使えなのですが、娘が大学で使う際にWindows 11 Proにアップグレード。このときにBitlockerでSSDが暗号化されてしまったようです。
筆者が受け取った際に、Dellの「リカバリー」ツールでリカバリを実施、Windows 11 Homeに初期化しました。ところが、Bitlockerを使ったSSDは、そのまま暗号化の状態になっていたようでした。つまり、Bitlockerに対応していないWindows 11 Homeでも暗号化されたSSDが読めるようなのです。
この状態だと、BIOSでセキュアブートの設定を変更しても、Bitlockerの認証画面が立ち上がります。そして、その結果(?)Ubuntuインストーラーが起動しない。
Windows 11 HomeではBitlockerの設定は表示されません。色々と調査・悩んだ挙げ句、Windows 11 Proにアップグレードして、設定画面からBitlockerを無効化。これでUbuntuのインストーラーが無事起動するようになりました。結構気づかぬトラブルでハマリポイントだったので、ここで発信しておきます。
UbuntuならDell?
今回、Dell Inspiron 14 5425にUbuntuをインストールしました。その過程で知りましたが、Dellは結構Linuxに前向きのようです。公式サイトにもLinuxを使うケースの説明がいくつか見つかりました。実際に使ってみても、WiFiやカメラ、ポインティングデバイス、畳んだときのスタンバイ状態など、ハードウェアがちゃんとUbuntuで動作しているのが確認できます。とても快適です。
すばらしい、DellのUbuntu。
ご注意:
以下に、広告のリンクを貼り付けますが、筆者がUbuntuで動作確認したわけではありません。筆者の5425はすでに製造停止。以下の商品をもし購入する際は、DellのLinuxサポートは良さそう、と言う情報を参考に、ご自身の判断でご選択下さい。
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